国立科学博物館・国立歴史民俗博物館・読売新聞社
「縄文VS弥生展」
2005 A4版139頁
表紙の写真には、いささか「引いて」しまうのですが・・・
新聞社の事業部主催企画展のゆえ、広く関心を呼ぼうと、奇抜さを狙ったのでしょうか?
でも、表紙でたじろいではいけません。
表題の通り「縄文人」と「弥生人」、「縄文文化」と「弥生文化」の違い・共通点について扱っています。
具体的には
「骨からわかる運動能力」
「微少な生物資料からわかること」
「骨の元素分析(食べたものを知る)」
「動物とのつきあい」
「お母さんの骨盤に刻み込まれた赤ちゃんの痕跡」
など、いかにも、われわれ歴史好きの一般人が興味を持ちそうなテーマごとにまとめられています。
冒頭章は「あなたのなかの縄文と弥生」ですが、人間、誰もが一度は抱く「自分はどこからきたのか?」という素朴な問いが、歴史への関心の根源であるとするならば、歴史教育機関として非常に本質的なテーマを提示したとも言えます。
DNA分析などを利用した最新の研究成果を、資料写真や統計図など視覚材料を使って、全体像がつかめるように要領よくまとめる−という博物館図録の教科書のような好図録だと思うのですが。
氷川書房が選ぶ2005年ベスト図録(笑)。
関連で以下も挙げておきます。
こちらは人類学。
テレビ番組「NHKスペシャル」の関連企画でもあり、同名の書籍も出ていますので、図録の存在価値はどうか?−ですけれども。
国立科学博物館
「日本人はるかな旅展」
2001 A4版117頁
2007年02月04日
1920年代のこと
東京都美術館・愛知県美術館・兵庫県立近代美術館
「1920年代日本展」
1988 28x23cm 333頁
これは私も見に行きました。もう20年近く経つのですね。
一つの時代を、これほど包括的に捉えた企画は、この翌年のセゾン美術館「ウィーン世紀末展」ぐらいで、他には今日にいたるまで例を知りません。
1920年代という「好材料」を絵画・音楽・建築・都市計画・写真・ジャーナリズム・広告デザイン・演劇などの切り口から見せた、本当に「面白い」展覧会でした。
なお、私、おそらくはこの展覧会のモデルとなった「ウィーン世紀末芸術−夢と現実展」(Traum und Wirklichkeit. Wien 1870-1930)を1985年にウィーンで見ております。
ウィーン世紀末を絵画や建築、デザインなど重層的な切り口で見せる大規模な展覧会で、今も忘れられません。(以上、自慢)
上記の図録にも出てきますが、1920-30年代といえば、この人。
目黒区美術館
「山名文夫展」
1998 B5版223頁
この人は戦後も活躍しているわけですが、どうしても「1920-30年代」のイメージですね。
その点で、もっと極端なのが
東京都庭園美術館
「カッサンドル展−ポスター英雄時代の巨匠」
1991 28X23cm 138頁
アール・デコ時代を象徴する鉄道や船のポスターは、あまりにも有名ですが、戦後は不遇で、生活にも窮し、自殺を遂げたとか。
亀倉雄策氏の解説も印象的です。
昨年は藤田嗣治の大回顧展が開かれ、盛況だったそうです。
藤田やカッサンドルは、1920-30年代のパリという「時代と場所」を体現したのかもしれません。
その意味では、この人も見落とせません。
目黒区美術館
「高野二三男展−アール・デコのパリ、モダン東京」
1997 A4版145頁
藤田とともに、日本人では数少ない「パリでめしの喰える画家」(薩摩治郎八)の一人。
この人の作品、藤田と似ていると思うのは私だけでしょうか。
まぁ、藤田とは友達だったわけですが。
藤田と似ているというより、二人とも時代の雰囲気・嗜好をグッと掴んだ−と考えた方が良さそうです。
20-30年代ネタをもう一つ。長くなりますので、余計な註釈はここまで。
東京都庭園美術館
「ポスター芸術の革命 ロシア・アヴァンギャルド展−ステンベルク兄弟を中心に」
2001 A4版189頁
「1920年代日本展」
1988 28x23cm 333頁
これは私も見に行きました。もう20年近く経つのですね。
一つの時代を、これほど包括的に捉えた企画は、この翌年のセゾン美術館「ウィーン世紀末展」ぐらいで、他には今日にいたるまで例を知りません。
1920年代という「好材料」を絵画・音楽・建築・都市計画・写真・ジャーナリズム・広告デザイン・演劇などの切り口から見せた、本当に「面白い」展覧会でした。
なお、私、おそらくはこの展覧会のモデルとなった「ウィーン世紀末芸術−夢と現実展」(Traum und Wirklichkeit. Wien 1870-1930)を1985年にウィーンで見ております。
ウィーン世紀末を絵画や建築、デザインなど重層的な切り口で見せる大規模な展覧会で、今も忘れられません。(以上、自慢)
上記の図録にも出てきますが、1920-30年代といえば、この人。
目黒区美術館
「山名文夫展」
1998 B5版223頁
この人は戦後も活躍しているわけですが、どうしても「1920-30年代」のイメージですね。
その点で、もっと極端なのが
東京都庭園美術館
「カッサンドル展−ポスター英雄時代の巨匠」
1991 28X23cm 138頁
アール・デコ時代を象徴する鉄道や船のポスターは、あまりにも有名ですが、戦後は不遇で、生活にも窮し、自殺を遂げたとか。
亀倉雄策氏の解説も印象的です。
昨年は藤田嗣治の大回顧展が開かれ、盛況だったそうです。
藤田やカッサンドルは、1920-30年代のパリという「時代と場所」を体現したのかもしれません。
その意味では、この人も見落とせません。
目黒区美術館
「高野二三男展−アール・デコのパリ、モダン東京」
1997 A4版145頁
藤田とともに、日本人では数少ない「パリでめしの喰える画家」(薩摩治郎八)の一人。
この人の作品、藤田と似ていると思うのは私だけでしょうか。
まぁ、藤田とは友達だったわけですが。
藤田と似ているというより、二人とも時代の雰囲気・嗜好をグッと掴んだ−と考えた方が良さそうです。
20-30年代ネタをもう一つ。長くなりますので、余計な註釈はここまで。
東京都庭園美術館
「ポスター芸術の革命 ロシア・アヴァンギャルド展−ステンベルク兄弟を中心に」
2001 A4版189頁
posted by 氷川書房 at 19:18| この図録が面白い!
2007年02月03日
江戸の地下室
東京都教育委員会・朝日新聞社
「東京の遺跡展−お江戸八百八町地下探検」
平3 B5版114頁
最近増えてきた近世考古学/江戸考古学関連の展覧会の一つです。
入手も比較的容易で、江戸考古学全体が要領よくまとまっています。
同種の図録としては、
新宿歴史博物館の「江戸のくらし−近世考古学の世界」もあります。
(現在、当店に在庫がないので画像は紹介できません)
さて、この図録を見ると、江戸の町には意外と多くの地下室があったことがわかります。
その多くは火災の時に荷物を運び込むためのものだったようです。
石材で本格的につくられた地下室もあったようです。
「江戸の地下空間」というと水道ぐらいかと思っていました。
テレビの時代劇にも時代小説にも地下室がでてくる場面は記憶にありません。
現代人の知らない「江戸の地下世界」−なんだか面白そうな響きです。
上記を江戸考古学総論の展覧会とすれば、各論では
東京大学総合研究博物館
「加賀殿再訪−東京大学本郷キャンパスの遺跡」
2000年 B5版210頁
は、東大構内の出土資料から加賀藩邸を徹底的に分析した、これまた面白い図録です。
「東京の遺跡展−お江戸八百八町地下探検」
平3 B5版114頁
最近増えてきた近世考古学/江戸考古学関連の展覧会の一つです。
入手も比較的容易で、江戸考古学全体が要領よくまとまっています。
同種の図録としては、
新宿歴史博物館の「江戸のくらし−近世考古学の世界」もあります。
(現在、当店に在庫がないので画像は紹介できません)
さて、この図録を見ると、江戸の町には意外と多くの地下室があったことがわかります。
その多くは火災の時に荷物を運び込むためのものだったようです。
石材で本格的につくられた地下室もあったようです。
「江戸の地下空間」というと水道ぐらいかと思っていました。
テレビの時代劇にも時代小説にも地下室がでてくる場面は記憶にありません。
現代人の知らない「江戸の地下世界」−なんだか面白そうな響きです。
上記を江戸考古学総論の展覧会とすれば、各論では
東京大学総合研究博物館
「加賀殿再訪−東京大学本郷キャンパスの遺跡」
2000年 B5版210頁
は、東大構内の出土資料から加賀藩邸を徹底的に分析した、これまた面白い図録です。
posted by 氷川書房 at 19:10| この図録が面白い!
2007年02月02日
町田市立博物館のこと その2
町田郷土資料館
「大工道具展」
昭49 B5版40頁
町田市立博物館
「江戸期色絵そばちょこ展」
1982 B5版60頁
町田市立博物館
「もめん以前のこと展−藤布・葛布・科布」
昭58 B5版36頁
町田市立博物館
「かご・バスケッタリー−編み組みのうつわ」
1984 B5版横綴56頁
以前紹介した町田郷土資料館・町田市立博物館のユニークなテーマの図録が、また入りましたので、御紹介します。
「大工道具展」は工業デザイナーの秋岡芳夫氏のコレクションを中心として。
このなかで特に面白いのは「もめん以前のこと」でしょうか。
「もめん以前」で思い浮かべるのは麻ですね。
柳田国男の本でも、出てくるのは麻だけだったと記憶してます。
(手間を惜しんで原典に当たっていないので、違ってたらゴメン)
ところがこの図録を見ると、いかに多彩な植物材料が着物地として使われていたかわかります。
参考資料として「鮭の皮」の着物というのもある!
もちろんアイヌですが。
火であぶったら香ばしそうです。
「大工道具展」
昭49 B5版40頁
町田市立博物館
「江戸期色絵そばちょこ展」
1982 B5版60頁
町田市立博物館
「もめん以前のこと展−藤布・葛布・科布」
昭58 B5版36頁
町田市立博物館
「かご・バスケッタリー−編み組みのうつわ」
1984 B5版横綴56頁
以前紹介した町田郷土資料館・町田市立博物館のユニークなテーマの図録が、また入りましたので、御紹介します。
「大工道具展」は工業デザイナーの秋岡芳夫氏のコレクションを中心として。
このなかで特に面白いのは「もめん以前のこと」でしょうか。
「もめん以前」で思い浮かべるのは麻ですね。
柳田国男の本でも、出てくるのは麻だけだったと記憶してます。
(手間を惜しんで原典に当たっていないので、違ってたらゴメン)
ところがこの図録を見ると、いかに多彩な植物材料が着物地として使われていたかわかります。
参考資料として「鮭の皮」の着物というのもある!
もちろんアイヌですが。
火であぶったら香ばしそうです。
posted by 氷川書房 at 19:06| この図録が面白い!
石包丁のつくりかた
大田区立郷土博物館
「製作工程の考古学」
平10 B5版119頁
「博物館における考古展示に対して、来館者から「これは、どのようにして作られているのですか?」
という質問がたいへん多く寄せられます。」
そうだろうな。
で、それに答えたのが、この図録。
「石包丁」という道具があって、ひもを通す穴が開いている。
あれは、どうやって開けているんだろうと、見るたびに疑問に思っていましたが、石製の錐と一緒に展示してくれると「なるほど!」ということになります。
面白いのは、「失敗品」の数々。
人間らしくて面白い−という以上に、失敗するところがわかれば、作り方もおのずからわかってくるわけです。
「製作工程の考古学」
平10 B5版119頁
「博物館における考古展示に対して、来館者から「これは、どのようにして作られているのですか?」
という質問がたいへん多く寄せられます。」
そうだろうな。
で、それに答えたのが、この図録。
「石包丁」という道具があって、ひもを通す穴が開いている。
あれは、どうやって開けているんだろうと、見るたびに疑問に思っていましたが、石製の錐と一緒に展示してくれると「なるほど!」ということになります。
面白いのは、「失敗品」の数々。
人間らしくて面白い−という以上に、失敗するところがわかれば、作り方もおのずからわかってくるわけです。
posted by 氷川書房 at 19:00| この図録が面白い!
2007年02月01日
紙芝居の来た頃
足立区立郷土博物館
「黄金バットの時代−街頭紙芝居の人々」
1991 A4版40頁
わたしなどは、もはや紙芝居を知らない世代です。
消滅した文化の保存が博物館に課せられた使命のひとつであるならば、「紙芝居」などは恰好の材料でしょう。
が、このテーマの展覧会は、ほとんど例がないのではないでしょうか。
それは紙芝居にまつわる「モノ」の収集が難しいためでしょうが、この図録では松田春翠を取り上げたり、「最後の紙芝居屋」森下正雄氏のインタビューをしたりと、大変面白くできています。
興味深いのは「紙芝居屋の一日」として、地図上で紙芝居屋さんの移動を追ったページ。
移動の距離が、ものすごく短いのです。
「その頃は子どもも多かったし、通りをへだてたら他の子は遊びに来ない縄張りみたいなものがあったからすぐ近くでも商売になりました」−なるほど。
「黄金バットの時代−街頭紙芝居の人々」
1991 A4版40頁
わたしなどは、もはや紙芝居を知らない世代です。
消滅した文化の保存が博物館に課せられた使命のひとつであるならば、「紙芝居」などは恰好の材料でしょう。
が、このテーマの展覧会は、ほとんど例がないのではないでしょうか。
それは紙芝居にまつわる「モノ」の収集が難しいためでしょうが、この図録では松田春翠を取り上げたり、「最後の紙芝居屋」森下正雄氏のインタビューをしたりと、大変面白くできています。
興味深いのは「紙芝居屋の一日」として、地図上で紙芝居屋さんの移動を追ったページ。
移動の距離が、ものすごく短いのです。
「その頃は子どもも多かったし、通りをへだてたら他の子は遊びに来ない縄張りみたいなものがあったからすぐ近くでも商売になりました」−なるほど。
posted by 氷川書房 at 18:58| この図録が面白い!