2009年01月31日

危機と人間

33678.jpg 龍ヶ崎市歴史民俗資料館
「幕末維新期の旗本−松平諦之助の場合」
B5版91頁 平8



世の中「百年に一度」の経済危機で大変なことになっておりますが、かつて「三百年に一度」の危機に直面した人たちがいました。

幕府瓦解という事態に、幕臣たちはいかに行動したか。
とても興味深いテーマですが、史料が少ないためか、われわれ一般向けにまとめられた本はないようです。
まあ、幕臣といっても数が多いですし、旗本株・御家人株の売買が横行し、江戸という消費都市に長年暮らして都市的価値観に馴染んできた人たちですから、幕府への帰属意識や忠誠心も人さまざまで、地方の藩のように一枚岩で語ることはできないのでしょう。
樋口一葉のお父さんのように、御家人株を買って幕臣になったと思ったら、ほどなく幕府がなくなってしまった−なんて人もいます。

この松平諦之助という人は、三千石の旗本の次男坊。
西洋式陸軍の士官などを勤めますが29歳で維新となります。
いったん豊後にある知行地に移住しますが、ほどなく東京に戻り、最後は龍ヶ崎市内のある名主の家に婿入りします。
だから龍ヶ崎でこの展覧会が開かれたわけですが、詳しいことはよくわからないようで、ちょっと残念です。
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2009年01月24日

広告の裏

32649.jpg 神奈川県立金沢文庫
「紙背文書の世界」
B5版63頁 平6



紙背文書とは何か。
この図録ではこう解説しています。
「押入れにいれたままの箱に、子供たちの落書きの絵があり、その裏に広告が印刷されていたとしよう」
ありますね、こういう状況。
こういう例えを出してもらうと、「紙背文書」の意味がすぐわかる。
こうした場合、たいがいは広告の方に見入ってしまう。
「へえー、こんなのがこんな値段だったんだねえ。
このモデルさん、×××だよね。若いねえ・・」
という具合である。

むかしは紙が貴重品だったから、手紙などの裏を再利用する。
お寺では写経に使う。
金沢文庫の紙背文書は、おおくは称名寺で再利用されたもの。
国立歴史民俗博物館に行くと東大寺で再利用された紙背文書のホンモノを見ることができる。
いまになってみれば、お経はあんまり大事でなくて、裏の広告の方が大事なわけだ。

さらに面白いのは、再利用しようとする紙が皺だらけになっている場合。
皺をのばすため、何枚も重ねて霧吹きをする。そして上から重しをしておく。
そのため、上下の手紙の文面も移ってしまうことがある。
一枚で三度おいしいわけだ。

というわけで、こんな話が満載の面白い図録です。


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