2014年08月15日

動物たちへのレクイエム

393260.jpg埼玉県平和資料館
「テーマ展 戦争と動物たち」
A4版45頁 平23



毎年この時期、戦争を扱ったドキュメンタリーなどを見かけることが多いですね。
もう5〜6年前になりますかしら、クリント・イーストウッド監督が太平洋戦争の激戦・硫黄島攻防戦をテーマに連作映画を撮ったのを覚えてませんか?

その一作「硫黄島からの手紙」で、こんなシーンがありました。

日本のどこかの町、憲兵が歩いていると、とある家の飼い犬がワンワンと吠える。
憲兵は有無を言わさず犬を射殺する。

そんなバカな!! いくらなんでもそんなこと現実にあるはずない。ハリウッド映画はめちゃくちゃ描きよるなぁ

と観ていた私は思いました。

が、あながち見当違いでもない−ことを、この図録で知りました。

「犬の献納運動」
そんなものがあったんですね。初めて知りました。
誰がそんなこと考え出したのか。
飼い犬の献納を呼びかける当時のパンフが収録されています。
そこには「犬の特別攻撃隊を編成して」なんて書いてあるけど、まさか本気でそんなこと考えていたわけではあるまい。
そうして集められた数十万頭の犬は
「人目につかないところで撲殺された」・・・・

いったいなんの為に・・・・

「象の花子さん」だけではない、数え切れない動物たちを襲った悲劇を伝える資料集です。
処分された猛獣たち、戦場に散った軍馬・軍犬たち、浮かばれない何十万・何百万の命。それを知ったところでボクにはどうにもできないけれど、でも、知っているからこそ思いを馳せることもできる。
知ることは大切なんです。。。
posted by 氷川書房 at 00:00| この図録が面白い!

2014年08月06日

北の海を渡って

393260.jpg北海道開拓記念館
「山丹交易と蝦夷錦展」
A4版64頁 平8



「蝦夷錦」って織物、知ってますか?
本来は清朝の官服。
ほら、映画「ラストエンペラー」で西太后や溥儀が絹に豪華な刺繍のほどこされたガウンみたいな中国服着てるでしょう?たぶん、あの類だと思うんです。

で、清朝は沿海州の少数民族をコントロールするため、それぞれの部族の有力者に官職を与えるわけです。有力者たちも「肩書き」が欲しかったんでしょうね。
そして、官職に応じて豪華な刺繍入りの官服を与えた。
辺境地帯では、この豪華な絹服の価値は高く、対岸の北海道・樺太のアイヌ人たちに売られていった。アイヌの族長たちは礼服として珍重し、さらにアイヌ人から松前の和人たちの手に渡る。

アイヌから入ってきたから日本の人たちは「蝦夷錦」と呼んで珍重した。

この図録を読んでいて疑問に思ったのですが、日本国内で需要があるなら、なぜ長崎経由で直接中国から輸入しなかったのかな?

理由は様々あるんでしょうが、この図録によると「蝦夷錦」と名付けたのは松前の人たちだとか。
本当は「清錦」なわけだが、それを言っちゃあアイヌ−沿海州のツングース系部族−清帝国の密貿易がバレてしまう。
もしかすると長崎経由の正式貿易ルートに利益を横取りされるのを怖れて「蝦夷」の物産であることを強調したのかも、なんて思ってしまいます。
なんか、松前藩ってアイヌ貿易でサケの数をごまかしたり、悪者のイメージが取れない。
いや、それはボクだけの思いこみですね。スミマセン・・・・

かつてオホーツク海周辺地域は文化的に一体で、「環オホーツク文化圏」として独立した存在だった。
蝦夷錦の交易ルートも、その文化圏あっての話。
そこに中国と日本が、さらにはロシアが入り込んできて文化圏をズタズタにしてしまう。
「蝦夷錦」はそこに不自然なカタチで現れたフシギなモノ、そんな気がします。

なお、このテーマでは他に
「蝦夷錦と北方交易」青森県立郷土館 平16
「北のシルクロード蝦夷錦の来た道」 札幌市中央図書館 平3
があります。
posted by 氷川書房 at 11:00| この図録が面白い!
Powered by さくらのブログ