江戸東京博物館
「永井荷風と東京」
A4版219頁 1999
前回ちょっと話題に上がった永井荷風の展覧会図録。
現在のところ、これが決定版というべきでしょう。
やっぱりと言うべきか−この図録はなかなか手に入りません。
荷風ファンは多いですからね。
荷風は、その生涯や作品の書誌のみならず、「断腸亭日乗」に綴られた社会批評、さらには行きつけの飲食店で何を食べ、何を着ていたかまで、細部にわたって紹介され尽くした感があります。
それは「元祖散歩者」「高等遊民」さらには「エロじじい」、さまざまに呼ばれるその生き方が、80年代後半あたりから現在にいたる社会思潮にマッチしたからなのでしょう。
社会が荷風に追いついた−というべきか。
ですから、この図録も良くまとまった「集大成」という感じです。
私は、前回も少し触れましたが、荷風が資産家であったことは、その文学の非常に重要な要素だと思うのですが、この図録には几帳面な文字で書かれた「株式取引台帳」の写真が載っています。
どんな銘柄を買っていたのかな。
「麦酒」というのはアサヒですか?
「三井化学」。「日粉」は日清製粉ですか?
まあ、そんなこと知っても仕方ないですが。