2007年01月31日

日本の家に油絵が入るまで

兵庫県立近代美術館
「日本美術の十九世紀」
1990 A4版135頁

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なんとも興味を引かない題名ですが(失礼!)、作品の珍しさよりも企画の面白さ(失礼!)で読ませ、見せる図録です。

明治期に西洋絵画が日本に入ってきたものの、日本の家には絵を飾る場所がなかった!
言われてみれば、そうですね。昔の日本家屋の部屋は障子・襖と柱に取り囲まれているわけだから。
絵を飾ろうと思えば床の間しかない。しかし床の間には西洋絵画は入らない!
この問題を解決しようとする高橋由一の苦闘に一章が割かれます。
今でも、ミョーに高い位置に絵を飾っているお宅があります。絵を見上げるようにして鑑賞するわけです。
ある時、ふと気が付いたのですが、これは「扁額」の感覚が、まだわれわれの体の中に残っているからではないでしょうか。

以上のような話のほかに、「写真と絵画」「見せ物から展覧会へ」などの話題を軸にして、「今ではもう、美術館を訪れ、壁に並んだ額縁入りの油絵を眺めれば、誰もそれが美術鑑賞だと信じて疑わな」くなるまでの日本社会と美術の関わりの変化を追った、とっても面白い図録です。
posted by 氷川書房 at 18:55| この図録が面白い!
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