
「民衆文化とつくられたヒーローたち−アウトローの幕末維新史」
A4版183頁 2004
「古本屋的に」言えば、歴博の図録はどれも人気が高いのですが、これはその中でも入手が難しい一冊。
「天保水滸伝」とか国定忠治とか清水次郎長とか、さすがに最近は「聞いたこともない」という若い人も増えました。
私ぐらいが、これらの名前に親しんだ最後の世代でしょうか?
博徒や侠客と呼ばれる「幕藩体制の異端児」たちがなぜ生まれたのか。
そして幕末維新の動乱の中で果たした知られざる役割。
そのあたりを丁寧に追っていきます。
清水の次郎長の敵役として知られる「黒駒の勝蔵」が勤王の志士だったって初めて知りました。
維新に先立って倒幕の挙兵を策し、戊辰戦争では官軍に加わって戦います。しかし動乱が収まると突然、博徒時代の殺人の罪を持ち出されて処刑されてしまう。
赤報隊の相楽相三だけでなく、こんな人がいっぱいいたんでしょうね。
彼らは、やがて活動写真の時代に、チャンバラヒーローとして復活しますが、そこでは政治的な毒気はすっかり抜かれていた−というわけ。
いや、この図録は面白い。人気が高いのも肯けます。